お参りにきたら…、撤去を巡るお墓の裁判
本日はお墓の無断撤去を巡った裁判についてお話をさせていただきます。
大阪府北部のある墓地公園を運営する宗教法人を相手取って行われた裁判の判決が、昨年12月12日に言い渡されました。
事の始まりは平成23年の12月30日、40年以上も前に亡くなられた夫が眠る墓地公園にご家族がお参りに行くと、
そこには墓石が撤去されたうえに更地となっており、「空き墓地につき申込受付中、お問い合せは事務所まで」という立て札が。
何も知らされずにお墓を撤去されたことに、当然納得のいかないご家族が事務所に対し講義を行ったところ、
職員の方からは「管理料が支払われてないので撤去した、払っていないのが悪い」と答えたとの事です。
後日、墓地公園を管理する宗教法人に対し、代理人を通して遺骨の返還と損害賠償を求める催告書を送付すると、
法人側からは1つのダンボール箱が。
ご家族は開封せずに、法人側へと送り返したのですが、なんとその中には、撤去の際に掘り返された夫の遺骨が入っていたとの事でした。
その数日後に回答書がご家族に届きました。
① 管理料不払いで墓地使用契約を解除した
② 何度もそのことでご家族の方に連絡をしたが返事がなかった。
③ 墓地撤去については法的根拠に基づいたものなので不法行為ではない
などの内容が記されていました。
これを受け、昨年まで続いた裁判へと発展をしました。
ご家族の言い分は「管理料支払い義務がないことを前提に永代使用権を250万円で購入しており滞納自体が存在しない」と、
そもそも、撤去すること自体がおかしいと主張。
対する法人側は「永代使用権の販売ではなく土地使用契約を結んだだけで、
当初から管理料が存在していた」と撤去に対する正当性を主張しました。
ちなみに、この霊園の管理料は昭和43年当初は3000円だった管理料が、徐々に値上げされていき、
平成2年には10800円、8年には13200まで値上がりをしていたそうです。
ここで問題になったのは管理料が存在しないとしていたご家族が、
平成7年と19年に過去滞納していた管理料を払ってしまっていたことでした。
また、法人側からは毎年5月には滞納管理料の督促をした上で、
23年にはいってからは数回に渡って管理料を支払わなければ墓石を撤去すると連絡をしていた事が明らかになりました。
ただし、撤去の際には墓地埋葬法に基づく改葬手続きは踏んでいなかったようです。
これを受けた裁判官は墓地公園の運営には人件費がかかっていることと、ご家族が実際に管理料を払っていたことから、
ご家族に管理料の支払い義務があったと認め、その上で法人側が定期的に支払い請求は撤去に対する警告を行なっていたことで、
お墓の撤去は正答な理由があり、不法行為にはあたらないと結論づけました。
その一方で墓地埋葬法の手続きを無視した改葬に関しては、
「限度を超えた行いであり、原告らの精神の平穏が著しく害された」として不法行為が成立することを認めました。
最終的な判決は不法行為に対する慰謝料として亡くなった夫の妻に20万円、
その子供二人に各10万円の計40万円を支払うというものになり、
ご家族が求めていた支払い2600万円を大きく下回るものとなってしまいました。
今回の判決の決め手となったのは、管理料を払う必要が無いと主張していたにも関わらず管理料を払っていた事、
管理料を払わなければ撤去するという警告を再三受けていたにも関わらず返事をしていなかった事が挙げられると思います。
法令に従った手続きを踏まずに改葬手続きをしてしまった法人側にも問題があるとはいえ、
警告をしても音沙汰がない状況が続けば、霊園としてもいつまでも墓石を設置しておくわけにもいかないので、
撤去もやむを得ないのではないでしょうか。
霊園の中には一括で管理料を納める必要があったりと、年間以外の支払形態を採用しているものもあります。
霊園を探される際には管理料の支払形態も確認しておくといいですね。
荒木 太輔
私たちは、「本当に建てて良かったな」と思っていただけるお墓づくりをお手伝いするため、お墓の情報を提供してまいります。